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空手道 禅道会 小沢 隆 代表の武道人生⑪

空手の稽古法・競技体系が模索される中で

禅道会が設立したのは、1999年。一世を風靡したフルコンタクト空手のブームは過ぎ去り、それぞれに分裂していった時代であった。ある組織はスーパー―セーフ着用で顔面有り、ある組織は捌きに特化した稽古体系を築き上げていた。フルコンタクト空手そのものの大筋が細分化していった時代だったのである。当然のことながら、一つの空手組織・道場への入門者も選択肢が広くなる。まり、フルコンタクト空手の組織はそれまで一極集中だったのが、そうではなくなったのである。そんな時期に禅道会設立当初はどうであったか。それを訊ねると、小沢はこう答えた。

「当時の門下生は200名ぐらい。子どもの数は少なく、大人の数が多かったです。『武道とはなんぞや』という私見ですが、武道はいろいろな競技方法がありますが、基本はどんな競技で武道に接触できるか、適しているのかという側面があったと思うんですね。空手そのものが寸止めからフルコンタクトへと発展していったように。しかしながら、どの団体も水面下では、武道とはなんだという抽象的なものに対して輪郭を作っていこうとする試行錯誤の時代でもあったと思います」

禅道会が全国に広がっていった理由とは

そのような時代の流れの中でなぜ、禅道会が発展していったのか。自分としては、それが不思議でならなかった。

「自慢するわけではありませんが、武道として輪郭づける作業の中で明確づけられるものが禅道会にあったからではないかと思います。その他、安全性や稽古体系の整備をすることで、安全性を確立して稽古をすることを段階的に学べるシステムにしていったのも良かったんでしょうね。どんな人でも安全に学べることが、武道の理念を明確に見出すことができたと思うんです。ガチ稽古で怪我が続くようでは、武道の本質を見出す前に辞めてしまうことになります。だからこそ、禅道会では誰もが段階を経て学べる輪郭作りをしていきたかった。全国各地に禅道会が広がっていったのは、そうした稽古体系の中で育っていった内弟子たちが技を修得し、禅道会の理念を持ちながら各地で指導員として道場を開くようになったことにあります。むろん、指導員としての努力もあったのですが、そこには今までお話した禅道会の稽古体系があったからこそ、万人に受け入れやすかったのでしょう」

誰もが安全に取り組める稽古体系で武道の本質を見出していく

そうは言っても禅道会の競技体系は打・投・極の総合格闘技である。以前、このトピックス記事にも書いたことがあるが、自分自身、総合格闘技の選手と試し合いをしたことが三回ある。一回目はチョークスリーパーで締め上げられて落とされた。二回目は投げられてからの関節技でこれもギブアップ。三回目にして、ようやく引き分けることができたのだが、総合のルールで戦うとなると、打撃技もそうは簡単に決まらないことを肌で感じさせられたものである。そういう意味で、競技とはいえ、過激なルールと思っていたのだが、それをやんわりと否定するかのように小沢は話を続けた。

「初心者の場合は投げて押さえ込み10秒でポイント、試合時間が2分半。そこから3分になり、寝技で関節技もある50秒ルールになっていきます。それまではスーパーセーフ着用ですが、それ以上の上級者になると、ヘッドギア着用で試合も7分から10分になり、寝技は2分まで延長されます。いきなり、本格的な組手はせず、段階を経て、誰もが無理なく攻防をレベルアップできるようになっています」

呼吸力を高めることが重要ポイント。そのために…

さらに、前回の記事でも紹介したように、禅道会では設立当初から呼吸法を重視していた。それも単なる呼吸法ではない。小沢の言葉を借りれば、「技固有の呼吸法がある」のである。空手の気合も一つの呼吸法、技を出さず、静止している時の呼吸法もある、さらに空手の呼吸法である息吹のような呼吸法も自分の中の呼吸力を高めることができるそうだ。これを簡単に説明すると、空気は圧縮するから威力が生まれる。つまり、空手の技も呼吸を圧縮することで威力が生まれと言うのだ。呼吸の力を高めることで、一瞬の力を高めていくのが息吹。その時は丹田も意識するので、自律神経の調整にもなり、血流のバランスも良くなり、エネルギー循環も良くなる。いいことづくめの呼吸法だが、続けて小沢はこう語った。

「呼吸力を高めることは大切ですが、それには入れ物(身体)から作らなければならないんです。それが姿勢。その基本が正座です。呼吸力を高めていくには、体軸・丹田を感覚的にとらえていかなければならなりません。ですから、禅道会では基本・移動稽古で会陰と丹田と眉間を意識します。それをすることで、しっかりした立ち方、動き方を体得できるのです。そして、ここも大切なのですが、動くのに一番適しているのは、その人が自然に歩いている歩幅です。それを基本にして、試合をする時の動きを日常の稽古にフィードバックしていく。それによって、基本・移動稽古そのものが進化していくんですね。そのあたりを重視しながら、一人ひとりに指導しているのですが、そのような稽古を繰り返すことで、自身の認知活動が向上していくので、静止した禅よりも認知が楽にできるようになるんです。座ったままの禅よりも動く禅の方が自分の感度を把握しやすいんですね。さらに、フィードバックが流暢になるので、技術力・呼吸法を高めるためのアプローチがしやすくなります。同時に技の威力にもつながります。他にも相手との間合いの取り方など、様々な展開にも応用が効くようになります」

前回も書いたように、それらの稽古法は対人関係の間合いにもつながるので、座禅の問答のようなものよりも、技そのものの向上が顕著になると小沢は言う。また、人間の脳というものは過去に感じた感情をいい意味でも悪い意味でも妄想で膨らませてしまうケースがある。座禅ではそういうリスクもあるが、動禅ではそれがない。妄想が一人歩きしない「実戦という現実」がある。実戦、つまり現実と向い合っていくことが武道における真の禅というのが小沢の考え。単に座禅だけでの状態ではそうはならない。これはごく当たり前の話だ。「実戦・実際を通して自分をしっかり振り返っていくからこそ、他者のことをも思い遣ることができるようになる」と小沢は語る。この場合、何が実戦かというと、単なる「強い弱いではない」と言うのだ。人間には肉体的な制約がある。なんでもできる神様ではないのだ。少し難しい話になるが、だからこそ、「武道では互いに礼をして人、万物に向き合っていくことが真の実戦であり、現実と向き合い、心身で感じていくことが大切になる」と小沢は話してくれた。

「打撃攻防をやる空手では、あくまでも実戦を追求するうえでの禅を深めていこうとするものだと思います。世の中には様々な武道・武術がありますが、何がいいか悪いかではなく、カテゴリーが違うんですね。それはそれで良いとして、『現実の自分と対面して、自分がいかなる者かを知る場面が必要』になると思っています。禅道会はあくまでも技と禅の関連性と呼吸力養成の重要性、その輪郭を明確にしたことが世界的にも普及していった原因と思われます」

空手はもともと、総合格闘技的なものだったと小沢は言う。それが日本人固有の心身一体のアイデンティティであり、それが世界中の人に認識されているそうだ。

ちなみに小沢はつい最近、ロシアに赴いた際、そこで脅威を感じたと言う。「フィジカルはもちろんのこと気迫とマナー素晴らしさ。武道への純粋な思い…延々、6時間に及ぶ審査会で技術的には立ち組み技が脅威でした。彼らが求めてするのは武道そのもの。私はそんな彼らを見て、ロシア精鋭人の審査会は一層、感動を覚えると同時に今までにない脅威も感じました」と語っていた。

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