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自分の弱い心をどう制御するか…それが目標 高萩英樹さん6

合気道の達人・塩田剛三師が弟子に語った名言

高萩は続けて語った。

「それから、どんなに肉体的に強くても、武術に優れていても、武器の前にはほとんど破られます。例えば、私にナイフを持たせたら、強いですよ(注:高萩は戦いにおけるナイフテクニックも熱心に鍛練している)。しかし、武器を持った相手ですら、殺意を持った相手ですら、『これ以上はできない…この男は素晴らしく、そして生きる価値がある』と思わせたら、自分の勝ちですよね。話は少し変わりますが、養神館の塩田剛三先生が弟子に『合気道で一番強い技はなんですか?』と聞かれた時、『それは自分を殺しに来た相手と友達になること」と答えたという話は有名です。塩田先生は『日常、それ即ち武道』を信条としており、平素から一切の隙が無かったと言われていますが、生前弟子に対して『人が人を倒すための武術が必要な時代は終わった。そういう人間は自分が最後でいい。これからは和合の道として、世の中の役に立てばよい』と語り、護身術としての武道の意義を説いていたと言われていたそうですが、本当にそうだと思います」

高萩は氣空術で知り合った、自分の友人であり、武術仲間である。その探求心は素晴らしいものがある。そして、高萩の話を聞くにつれ、これはまさに、禅道会・小沢代表の話と同じではないかと思ったのだ。その思いは高萩の話を聞くにつれ、さらに強くなった。

自分の弱い心をどう制御するか…それが高萩の目標

人として、魅力を感じてもらえれば、相手の意識も転換されます。そして、敵というのは、何も対人だけではありません。例えば、地震や津波などの自然災害であったり、あるいは人的災害、火事であったり、交通事故であったりもするわけです。そういう時、人というのは、危険な状態にさらされて落ち着いて対処できる人間は極めて少ないのではないでしょうか。ある者は悲鳴を上げて泣くか、無力な自分を再認識して、呆然としてしまう。人というのは、いざという時に心身共に固まって、動けなくなってしまうものです。だからこそ、私の目指す武術というのは、そのような恐怖を乗り越えられるような精神的なアプローチこそ大切であると位置付けているのです。そのうえで、どのようなケースに遭遇しても自在に動ける護身の武術を目指していきたいのです。もちろん、今まで学んだいろいろな武術のエッセンスは全て使えるけれど、一番、重要なのは自分の弱い心をどう制御するかだと思うんですね。そのために、フィジカルよりも心の制御の仕方をメインとした、武術を探求していきたいと思っています」

恐れというものは高萩の言う通り、心身をガチガチに束縛し、いざという時に何も出来なくなるものだ。じゃあ、どうするかと言うと、「その心を制御する為にイメージを経験値に変換し、呼吸によって自在に動ける状態を維持するのです」と、高萩は語る。彼の言葉を借りて、ちょっと細かく解説すると…、人間というのは、今まで知らなかった未曾有の出来事に恐怖を抱く生き物である。例えば、空手の選手が同じ空手家と組手をするのは、それほどの怖さは感じない。緊張はしても、同じ技の攻防があると経験値から知っているからだ。しかし、それが柔道家などの選手と戦うのは、投げ・寝技などを知らないから怖い。「組まれたら、どうしよう。寝技に持ち込まれたら、なすすべがない」そう思うものである。

高萩の話は続く。
「これをもっと大きな視点で言うと、単なる地震だと怖くはありません。それは自分の中に今までの経験値があるからです。でも、未曾有の大地震を経験すると、限りない恐怖を覚えるはずです。なぜかと言うと、その地震がいつ終わるか分からないし、二次災害、三次災害がどのように発生して、自分をどのように巻き込むか全く分からないから。つまり、人間は知らないこと、経験していないこと、未知の出来事に恐怖する生き物なのです。ところが一方、一回でも二回でも経験を積んでいるなら、ある程度は落ち着いて対処できます。経験値があるということは、それだけ記憶に熱烈に残っているということ。であるならば、記憶を創作してしまえばいい。未知のものに対する出来事を作ればいいのです。じゃあ、それをするにはどうしたらいいのか。それは細部に至るまで繊細なイメージを練り上げるということ。経験値というのは記憶が基となっています。だから、その記憶をイメージを使って経験値に変換してしまえばいいのです。経験を作り出す訓練が大事ということですね。とはいえ、イメージを変換するためには、雰囲気、状況、色、匂い、形、味まで深くイメージしないとできません。現実のものと見まがうごとく、リアルなイメージが必要なのです」

このあたりの話も禅道会・小沢代表の話と同じである。高萩にそれを伝えたら「小沢先生も私と同じことを言われているのですか!それは嬉しいなぁ!」と喜んでいた。続けて、高萩の話。

「しかし、イメージを全て経験値に昇華できるならば、そんなことが簡単にできるなら、誰も苦労はしません。それをすることはかなり難易度が高いです。難しいが故に、未知の世界に直面した時には、脳からアドレナリンが放出され、緊張が体と心を硬くして、身動きがとれなくなってしまいます。なので、それを緩和するために呼吸法が必要になってきます。深く、ゆっくりとした呼吸というのは、酸素を体の細胞の隅々にまで届けます。そして、緊張感を軽減させて、自分の体の中に落ち着く状態を作ってくれます。だからこそ、呼吸法が重要だと思うのです。呼吸法にはいろいろありますが、酸素を吸って、緊張から心身を離脱することが大切。なので、自分が目指す武術、「Urban Self Defense」と名付けていますが、深くゆっくりとした腹式呼吸を常にするように心がけています。ちょっと、総論になるようですが、武術的な技のみならず、心の機微(表面からは分かりにくい、微妙な心の動きや物事の趣)に光を当てたものを主としなければならないというのが私の考え。つまり、流派を超えて自在に動ける武術、それが私の目指す武術なのです」

以上で高萩の話は終わる。彼は今、自分が修練してきた様々な格闘技や武道、そして、畑村会長の主宰する氣空術をベースとして、自ら新たなる武術を構築しようとしているのだ。自分の友人なので、ここで彼の書いているブログのサイトも掲載しておく。ぜひ、みなさんにも読んでほしい。

●Urban Self Defenseと合気の極意
https://ameblo.jp/ren-no-blog-dayo/entry-12475731967.html

しかしながら、改めて思うことがある。自分も長年にわたって、打撃系格闘技の世界に身を置いてきた。それこそ、「強くなりたい」の一心で現役を引退してからも体を鍛えてきた。その経験を通して思うのは、やはり、自分の心の在り様である。武道の話から少し外れるが、以前、二度にわたって、地下鉄のホームで電車が来る間際に飛び降り自殺をしようとした人を咄嗟に、自分も線路に飛び込んで助けたことがあることは以前にも、この記事に書いた。その時の自分が勇敢であったかというと、そうではない。救って、ホームに上がった瞬間、膝が震えて、立っていられないぐらいになってしまったのだ。「いくら、強くなろうとしてきたって、俺はこんなものか」と思ったものである。だからこそ、自分は高萩同様に精神の修練もしていきたい。氣空術主宰の畑村会長からは、心の在り様がいかに大切かを教授していただいた。そして、禅道会・小沢代表からは武の心を磨くうえで、脳と呼吸法、リアルイメージの重要性、その科学的根拠を詳しく教えていただいた。自分も高萩同様に、自分の経験値にその付加価値を加えて、自分ならではの武術を探求していきたいと思っている。

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