前回は、相手に服を掴まれた時の対処方法を紹介した。今回は、一人もしくは多人数の相手が近づいてきて危害を加えられそうになった時の対処方法を紹介する。
空手道禅道会では、打撃の理論を指導する時に大まかに二種類の打撃に分類する。
一つ目は相手の行動を止める打撃(ジャブ、前足からの前蹴りなど)、二つ目はその後相手を倒す攻撃(右ストレート、廻し蹴りなど)。この二つは、打撃を出す目的が違う。打撃を放つ時の気合いの出し方も違う。
護身術として打撃を使う時は、相手が一人の場合、相手の行動を止める打撃はあまり使用しない。ジャブのような相手の行動を止める打撃は、相手よりワンモーション多くなるため、相手に悟られやすくなってしまう。そのような打撃は護身術には適さない。
護身術で必要な打撃では、適切な間合いからいかに相手を一発で的確に仕留めるか、そのためにいかに速く放つかだけを考える。
今回初めに紹介する右ストレートは、相手をいきなり倒す技の代表である。
通常の格闘技の打撃のワンツーフックは、護身術では使用できない。まず通常の時に腕を上げてガードの状態で道を歩く人はいない。普通の人は腕を下げて歩く。
また、歩く時人は腕を下げているのでその状態から腕を上げるとワンモーション多くなってしまう。
相手が武器を持っている時などはワンモーション動作が多いだけで命取りになってしまう。
相手が武器を持っていようとも懐に持っているうちは素手の対処方法と同じなので、いかにモーションを減らして相手を制圧できるかを考える。
1.相手がこちらに近づいてきた(写真A①)。
2.以前紹介したように不審な相手が予告なく1mの間合いに入り込んできた場合は基本的には攻撃に入っても良い。
国家間では領空侵犯という概念がある。相手が自分の間合いをむやみに侵してはいけませんよ、ということを決めるのである。個人と個人の関係も基本は同じ。その距離が1mの間合いである。
腕が下がっている状態から右の腰を入れ、右ストレートとまったく同じ打ち方で相手の顔を打撃して倒す(写真A②~④)。
相手が複数いる時には、一人の時よりも間合いの概念とワンモーションの大きさをもっと考えなければならない。
間合いは、相手が自分の1mの間合いに入った時に攻撃するスタンスを取っていると、二人同時に攻めてきたらどうするんだということになる。
相手には自分の間合いに順番に入って来てもらわなければならない。
そこで複数の場合は3mの間合いを相手が侵入してきたらこちらが攻撃しなければならない。
1mの間合いには相手に同時に入らせてはいけない。
そのために一番モーションが少ないジャブや前蹴り、後ろ蹴りといった相手の行動を止める技が必要となる(なお、写真では一人で複数の役を演じている)。
1.今回使用するジャブはフリッカージャブを応用した技である。
ボクシングの世界ではフリッカージャブは有名なのでご存じの方も多いかもしれないが、ガードを下に下げてから相手の顔にジャブを入れ込む技である。
まずはじめに後ろ足から前足に体重を移動させる(写真B)。
2.体重を前足に移動させた瞬間にそのエネルギーを使って左のパンチを出す(写真B②~③)。
3.この理論を応用して目潰しを行う。
相手が複数いる場合は、それだけでかなりきけんなじょうたいである。自分から相手の1mの間合いに入りつつ攻撃を加え倒せればいいが、複数の相手から同時攻撃をされてしまう例はいくらでもある。
まずはじめにフリッカージャブの要領で腕を振り出していく(写真B④)。
4.体重移動によって自分の腕が相手の目に吸い込まれる(写真B⑤~⑥)。
5.目潰しは一般的には二つの目を狙えと言われるが、実際にやってみるとこちらの指が骨折しそうになる。
二本の指を相手の顔につけ、相手の鼻の尾根を目掛けて突き出す(写真B⑦~⑧)。
6.相手の行動が一瞬でも止まれば、この時点では成功(写真B⑨~⑩)。
7.自分の背中の方にいる相手には後ろ蹴りを行う。
この時の後ろ蹴りは禅道会の移動稽古の後ろ蹴りで良い(写真B⑪~⑮)。
8.次に裏拳。
右腰を思いきり入れて手の甲で相手の顔を狙う(写真B⑯~⑱)。
9.前蹴りなどを入れ、相手が動きを止めた場合は、前足から踏み込んで横蹴りを行う(写真B⑲~㉒)。
10.相手が倒れたところで廻し蹴りを入れ相手の意識を奪う(写真B㉓~㉕)。
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