前章では、武道における心技体の統合の重要性について述べました。
そしてその中心にある「心」が、すべてを支配するとお伝えしました。
では、その「心」をつかさどるものは何でしょうか?
それが、脳の中でも特に重要な部位が前頭前野(ぜんとうぜんや)です。
本章では、
について深く掘り下げていきます。
前頭前野とは、脳の最前部、額の裏側に位置する領域です。
ここは人間の高度な精神活動
といった機能を司っています。
つまり、前頭前野は「自分自身を制御する力」を生み出す場所なのです。
動物と人間の最大の違いは、この前頭前野の発達度にあります。
武道修行で心を鍛えるとは、言い換えれば前頭前野を鍛えることに他なりません。
武道修行には、前頭前野を鍛えるための要素が数多く含まれています。
たとえば
これらはすべて、
という前頭前野の機能を活性化させます。
また、反復稽古や座禅によって雑念を手放し、今ここに集中する訓練を積むことも、前頭前野の発達に直結しています。
つまり武道修行とは、肉体を鍛えると同時に、脳(特に前頭前野)を鍛える行為なのです。
ここで、もう一つ重要な脳の部位に触れておきましょう。
それが扁桃体(へんとうたい)です。
扁桃体は、
といった感情を司る部分です。
本来、生存に必要な感情反応を担当していますが、過剰に働くと、
といった状態に陥ります。
武道の世界では、この扁桃体の暴走をいかに制御するかが極めて重要です。
ここで力を発揮するのが、前頭前野です。
前頭前野が強ければ、
ようになります。
つまり、前頭前野が扁桃体を制御する力を養うことが、武道家にとって不可欠なのです。
座禅は、前頭前野を鍛える最も効果的な方法の一つです。
座禅では、
という行為を繰り返します。
この「気づき→戻る」のサイクルが、
前頭前野の筋トレとなります。
科学的研究でも、
ことが確認されています。
禅道会では、座禅を単なる精神修養ではなく、脳と心を鍛えるための実践的な修行として取り入れています。
前頭前野が強化されると、武道だけでなく、人生全体にわたって大きな変化が現れます。
具体的には
これらすべてが、現代社会を生き抜くために不可欠な力です。
つまり、武道修行で前頭前野を鍛えることは、単に「戦う力」を高めるだけではなく、「生きる力」を養うことに直結しているのです。
項目 | 内容 |
---|---|
前頭前野 | 意志力、集中力、感情制御を司る |
武道修行 | 前頭前野を鍛える実践の場 |
座禅 | 前頭前野を強化する最強のトレーニング |
扁桃体との関係 | 前頭前野が扁桃体を制御して心を安定させる |
心を鍛えるとは、脳を鍛えること。
禅道会の修行は、心技体の統一と同時に、脳の成長も促す修行体系なのです。
【次章に続く】
第3章:座禅が脳を鍛える科学的メカニズム〜呼吸、姿勢、意識の統一が脳に与える影響〜