座禅によって心と脳を鍛えることの重要性をこれまで見てきました。
しかし、武道修行においては、それだけでは不十分です。
心と技と体が一体となるためには、体の「芯」つまり体幹の力が不可欠なのです。
そして、その体幹を支えるのが、横隔膜呼吸と腹圧です。
さらに、武道で語られる「氣(き)」とは、この体内のエネルギーの流れと深く関わっています。
本章では、
を科学的、実戦的な観点から掘り下げていきます。
横隔膜は、胸と腹の間にあるドーム型の筋肉で、呼吸を司る中心的存在です。
日常の浅い胸式呼吸では、この横隔膜を十分に使っていません。
しかし武道では、横隔膜をしっかり使った深い腹式呼吸が求められます。
これにより、
という効果が生まれます。
つまり、呼吸そのものが体の中心を作るのです。
腹圧とは、腹腔内(お腹の内部空間)にかかる圧力のことです。
腹圧は次の筋肉によって作られます。
これらの筋群が連携して腹腔を圧縮することで、胴体全体がまるで圧縮された筒のように強固になります。
これにより、
が生まれます。
腹圧は、武道家にとって、単なる体の強さ以上に、**技を支え、動きを支え、心を支える「見えない支柱」**なのです。
横隔膜呼吸を意識的に行うことで、自然に腹圧を高めることができます。
具体的には、
この吸う・吐くの連動により、
ことが可能になります。
また、腹圧を意識することで、
という大きな利点もあります。
武道では古くから「氣」という概念が語られてきました。
「氣」とは何か?
それは神秘的なエネルギーではありません。
科学的に言えば、
呼吸・腹圧・意識が統一されたときに生まれる、体内エネルギーの流れ
だと言えます。
この状態を「氣が乗った技」と呼びます。
氣が乗ると、
まさに、技・体・心が完全に一致した状態が生まれます。
禅道会では、日々の稽古の中で、
を徹底的に鍛えています。
たとえば、
これらの積み重ねにより、
が実現していきます。
項目 | 内容 |
---|---|
横隔膜呼吸 | 体幹と腹圧を高める呼吸法 |
腹圧 | 体幹を固め、技に威力と安定をもたらす |
氣 | 呼吸・腹圧・意識の統一から生まれる体内エネルギー |
武道における応用 | 技に自然な重みと速さを与え、心体一致を実現する |
呼吸を制する者は、技を制する。
腹圧を高める者は、体を制する。
氣を通す者は、武道そのものを極める。
これが、禅道会が伝える「呼吸・腹圧・氣」の真の意義です。
【次章に続く】
第5章:武道座禅 — 丹田を中心に据える修行法〜心身の“芯”をつくる丹田呼吸と座禅〜