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禅道会の伝える護身の技術・考えは対人だけではない

ストレス耐性を下げてしまっている、現代の日本の生活様式

禅道会が伝えているのは護身の技術だ。しかし、それは対人だけでなく、あらゆるものに対する護身を考えていくという話を以前、小沢代表に聞いて、心から納得したことがある。
前回の記事で呼吸法が人間の心身の調和を向上させることは分かっていただけただろうか。その記事で書いたコロナウイルスに対する護身、つまり、呼吸法によって自己免疫力を高めることもその一つである。これについて、もう少し詳しい説明を伝えておきたい。

「自律神経を整えるにあたって、有効ではない環境も現代社会の問題と言っていいかもしれません。
本来、人間は朝起きて、朝陽を見てから生活が始まるものなのに、現代社会は一日中、電気がついている中で私たちは過ごしています。すると、その環境的要因に自律神経に誤作動を起こしやすいものがあるのです。
後は、SNSをはじめとする、膨大な情報が私たちの潜在意識の中に入り込んできています。そういうものは、どちらかと言うとネガティブなものが多いので、真偽を問わず、自律神経が乱れやすく予期不安が起きやすい状態を招いているのです。
さらに、追い打ちをかけるように生活環境の欧米文化の変化がここに加わります。畳ではなく、椅子に座ったり、トイレも洋式になるなどの生活スタイルになり、昔から日本人が育んできた“丹田”を意識する状態が少なくなってきました。
そして、子どもだけでなく、大人も夢中になってやっているゲームなども問題です。短時間ならいいのでしょうが、長時間やっていると、これは主に視覚視野から入ってくる情報なので、五感を総動員することが欠けてくるのです。
結果的にこうした状態が人間のストレス耐性を下げてしまうことになるのです。それがある意味では、精神病や発達障害が増えている原因にもなっているほか、人間の免疫力の減少にも大きな影響を与えています。

ちなみにマインドフルネスになるための瞑想(呼吸法)をやると、慣れないうちは、しきりに雑念がわいてきます。つまり、情報があるということは、それだけ雑念がわきやすいのです(注:自分の経験から言って、継続するにつれ、それは少なくなってくる)。
また、社会風潮が個人というものを尊重するあまり、人と人とのコミュニケーションが薄くなっています。人の脳は人と関わるようにできているので、それが薄くなれば、それも大きなストレスになるのです。

実は私たち人間は、人と関わる方が本来はストレスが少ないです。孤独というのは、ある意味では最大のストレスなのです。
戦争時に幼児を預かる施設がありますが、栄養・衛生状態が良くても、コミュニケーションがないと、死んでしまうと聞いたことがあります。それだけ、人と関わる、他者と関係を持つということは大切なんですね。そして、この所属の欲求というのがあるので、幼児期に虐待を受けた子どもたちは、根本的に人と深く関わることができなくなっています。
これは老人ホームでも同じことで、しょっちゅう、家族が来る方とそうでない方との比較をすると、老人の人格も変わってきます。それによって、ありとあらゆる面から自律神経やストレス耐性が下がってしまうのです。
コロナの一番の怖さはここです。人と人との関わりの間がさらに広がり、希薄になってしまいます。これは未来を考えた時にウイルスの感染よりも怖いと言えるかもしれません。
人はよく言いますよね。『自分は●●をしている、●●という場に関わっているんだ』と。これらの声は先ほどの所属の欲求があるから、そういう発言が出るのです。

いずれにしても、現代社会は情報過多で、正確な情報ではなく、フェイクニュースを目や耳にしてしまうことで、不安という反応をしまうのです。
例えば、これがエイズなどの病気であれば、人々はそれに対する知識も持っているので、『ここを気をつけなくてはいけないな』という心構えを持つことができます。
しかし、分からないこと、未知のことに対しては脳が不安を抱くようになっています。これはある意味、人間の生き残りの手段でもあるのですが、その機能が情報過多の中で予期不安が起こりやすくなっているのです。結果、それによって五感もどんどん低下してきます。情報依存症状というか、見れば見るほど、聞けば聞くほど、不安になってしまうのです。
それを避けるためには、前回もお伝えしたように呼吸法をやって、マインドフルネスになり、五感を研ぎ澄ますこと。それによって、自分の精神状態もしっかりとし、人に対しても思い遣り、優しさを持てるようになります。自然本来の人間が有する能力というのは、それほど素晴らしいものがあるのです」

小沢代表の話は心から納得するものがあった。人間には本来、優れた能力がある。にもかかわらず、SNSやメディアなどの膨大な、かつネガティブな情報よって、人は知らず知らずのうちに緊張感と緊急性と不安を感じるようになっているのだ。だからこそ、五感を研ぎ澄まして、自らの内的身体感覚を感じようとすることによって、マインドフルネスの状態に近づけることが必要になる。そういう意味では、今こそ、文化的武道の叡智を日常生活に応用することが大切になるのではなろうか。
そして、最終的な免疫強化という点で言えば、「自分が人と人がちゃんとつながっている、だからこそ、自己責任を持つのだ!」という意識が自己免疫にもつながってくると、小沢代表は語る。
武道・格闘技はただ、強くなるだけでなく、自ら稽古をして、相手と試合をするという非常に深いコミュニケーションをしているのだ。武道をやっている我々だからこそ、そして、そうでない人も日常の生活の中に呼吸法など、一人でできることが可能なことを積極的に取り入れていくべきであろう。そうして五感を研ぎ澄まし、正しい情報を得られるようになる。それがコロナウイルスに負けない心と体作りだと感じさせられた。

呼吸を操ることで自律神経を整え、代謝を高めることが可能に

小沢代表の話はまだ、続く。

「私たちの周囲には、細菌やウイルスなどの病原体をはじめ、身体に有害なものがたくさん存在しています。そのような物質にさらされても病気にならないのは、ウイルスなどの病原体を身体から排除する、『免疫』という防護システムが人間には備わっているためです。 今回の新型コロナウイルスに罹患しても約80%の人は軽症で済むのは、体質もあるでしょうが 免疫の力によるものと思われます。ウイルスなどの病原体から私たちを守る防御システムのようなもの。血液の中にある白血球に含まれる免疫専門の細胞(免疫細胞)の働きでこのシステムが作られます。体内にウイルスが侵入してくると、免疫細胞が攻撃を開始し、体を守ろうとするのです。免疫には、病原体を食べるミエロイド系細胞(食細胞)、抗体をつくるBリンパ球、感染細胞を殺すキラーTリンパ球抗体などがあります。これら免疫のパワーをアップさせ、免疫の数も増やしていけば、ウイルスに感染しても症状を抑えることができます」

免疫力の強い人は病気にもかからないことは、知人の医師(内科医)から聞かされたことがある。免疫には“自然免疫”と“獲得免疫”の2種類があり、それぞれ働きが異なる。自然免疫は、運動や食事などの生活習慣で働きを活性化させることができると、その医師は教えてくれたのだ。小沢代表の話は次回にまだ続く。

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