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禅道会・青木隆明の武道人生②

禅道会長野支部長になる

前回からの続き。2008年の禅道会10周年の大会に参加した青木は決勝戦で、静岡支部長の熊谷選手と対戦して勝利。中量級で優勝を果たした。試合に対して、特に入れ込むということはなかった青木だが、過去に対戦して勝利した相手だったので、初めて「負けられない」というプレッシャーを感じたらしい。ちなみに、彼は研修生の時から「毎日の練習が試合」という気持ちでやっていた。試合だからといって、強い思い込みはなかったそうだ。そんな青木にどのような試合展開を得意としていたか?と訊ねると、「抑え込みで勝ったことはないのです。総合格闘技でよく見られるマウントをとって、コツコツ殴って勝利するというパターンはありませんでした。打撃より、関節と締め技で極めることが多かったですね。中でも足関節を得意としていました」という答えが返ってきた。

青木はキャッチ力が強いのだと思う。自分が感じたことを話すと、腕十字や三角締めだと、締め付ける力が必要で、長丁場にわたって締め付ける持久筋は練習のスパーリングで身についたと語っていた。その後、青木は2009年8月より、岩間支部長の代理として空手道禅道会長野支部 支部長代理に就任する。長野支部は門下生の人数が多かったため、指導中心の稽古が多くなり、今までのようにコンスタントに大会に出ることができなくなってきた。当時を振り返って、青木は語る。

「2017 年あたりからロシア支部の選手が大会に出るようになり、決勝戦まで行っても勝利することができなくなりました。フィジカで負けることもあったのですが、練習不足のうえ、大会の運営にも関わっていたことがその要因でした」

それまでは現役選手で自分の練習だけをしていた青木である。しかし、長野支部に来てからは指導が中心になってきた。勢い、練習量も減る。しかし、それを敗因の理由にしないことが彼のいいところである。ちなみに門下生に教える時間と同時に、自分の時間もある程度、コントロールできるようになったと言う。

「武道は対人も必要ですが、一人稽古も大切です。自分で動きながら、体の使い方をチェックしてく。シャドーのように相手を仮想して、攻防を組み立てることも必要ですし、一人だからこそできる稽古内容もあります。それを実感するようになってからは、時間配分も上手に取れるようになりました」

 

2016年、常設道場を立ち上げる

当初、青木が長野支部で支部長を担っていたのは出向というかたちだった。当然のことながら、道場を建てようとは思わなかったし、計画もなかったのだが、次第に状況が変わる。大きな理由は練習時間である。公共施設だと時間が限られているので、遅くまで練習ができない。武道・格闘技の練習では、身が入って、時の経つのを忘れることがある。むろん、いい意味での集中状態なのだが、そういう場合は公共施設だと不便である。さらに、門下生の数も増えるにつれ、常設道場をという気持ちが青木の中で次第に膨れ上がってきたのである。

「念願かなって道場を立ち上げたのは2016年です。三階建てのビルの一階でスタートしました。門下生の数も多くなり、活気が出てきました。練習熱心で上達してくると欲が沸いてくるものですが、そういう人の中には『プロでやりたい!試合に出たい』という方も増えてきました。しかし、既存の道場では手狭になっており、新たな稽古場所を考えていたのです。ところが、ちょうどその頃にコロナ禍。どうしたものかと迷っている時にタイミング良く、ビルの大家さんから『二階が空いているから使ってもいい』と言われました。そこで、思い切ってリニューアルを図ったのですが、一階はマシントレーニングジムにしました。子どもが練習している間、父母の方は待機していることが多いので、特別価格でトレーニングできるようにもしたのです。二階が空手の道場で、100㎡のスペースにオクタゴンを備えた総合格闘技道場にしました」

国産のオクタゴンはかなりの金額になる。だが、さまざまな会社の経営者と交流を深めていた青木は「誰もやったことをやった方がいい」と助言され、「やろう!」という気持ちになった。オクタゴンは門下生と組み立てたのだが、支柱の固定は門下生の親で大工さんが力を貸してくれたそうだ。

「みんなの力を借りて立ち上げた道場なので、これから活況を呈していきたいです。強くなりたい、選手を目指したい、体力をつけたい、ダイエットをしたい等々、入門してくる方の気持ちは様々です。そんな門下生の目的に応えるような間口の広い練習環境にしたいですね。現在、長野支部は公共施設の稽古に来ている子どもの門下生も含めると約300名。大所帯ですが、全員に手応えを感じてもらえるような指導に努めています。指導員は長野支部の上田市は福島、須坂市は森川道場長が担当しているほか、常設道場と千曲市を石岡と元自衛官の小林が指導に当たっています」

 

武道としての空手、格闘技としての空手

長野支部の長として、一家を構える青木。その彼に「自身が考える空手とはなにか?」という、質問をしたところ、こんな答えが返ってきた。

「年齢を経ても続けられる武道としての空手。それを目指していきたいです。少し、話がずれますが、自分は叔父の青木支部長や今津支部長に教わっていたので、小沢先生から直接、教えてもらうことはありませんでした。でも、お酒の席にはよく同伴させていただきました。そんなある日、『年をとっても、武道は強くなれるものでしょうか?』と訊ねたのです。小沢先生は格闘技とは関係のないような物理の話をよくされるのですが、その時も質量保存の法則の話をしてくれました。運動能力は加齢と共に肉体的に低下する。すべての動物がそう。しかし、人間の考える感情や思考は脳の中で言うと電気信号のようなもの。つまり、電気も質量ということですね。それは形が変わることはあっても、消えることはありません。これを武道に置き換えると、技というものは形が変わることはあっても、衰えることはないということです。衰えないから、精度は落ちません。『だから、武道は年を経ても続けることができるし、無理・無駄のない体の使い方を体得できる。それを目標に武道の先人たちが行ってきたのが修行』―そんな小沢先生の話を聞いて、自分なりに納得しました。武道には精神論だけでなく、そのような身体操作はあり得ると思ったのです。むろん、空手である禅道会にはそれを修得する練習体系があります。筋力だけの体の使い方だけでなく、年齢を経てもできる技を伸ばしていきたいですね。それと共に、MMAをはじめとする総合格闘技においては、フィジカルは不可欠です。門下生には試合出場を目標にしている人もいますし、そのためのオクタゴン導入でもありました。トレーニングマシンを充実させることでフィジカル強化も図れるようにしています」

電話で話す口調からも朴訥さと情熱が伝わってくる青木だが、選手時代は人に説明をして伝えるのが苦手だったらしい。しかし、長野支部を任されるようになってからは大人数なので、伝える力も大切だと実感した。「どうすればこの人に伝わるか」と考えながら指導にあたり、それをすることで新たに感じ入るものもあったそうだ。

今、指導で意識していることは選手の得意を活かして成長させること。そして、MMAなどの試合に出る場合は禅道会の大きな根幹(空手としての武道的な練習)の上にプラスアルファの技術も指導していると言う。ちなみに、長野支部は子どもの数も多いそうだ。幼少期の青木と同様、親の勧めで稽古している子もいるため、「どうやって練習の楽しみを感じてもらうか」という創意工夫の毎日だそうだ。大舞台で活躍する選手育成のための練習、一般門下生が自らの進歩を感じながら成長できる練習、そして子ども向けに楽しみながら強くなれるための練習…それぞれの目標に応じた内容を考える青木。そんな指導者のもとで学べる門下生はきっと強くなる。彼の話を聞いていて、そう確信した。

 

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