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禅道会 佐藤龍汰朗の武道人生

小学校五年生から柔道を始める

今回、紹介するのは禅道会・横浜支部の佐藤龍汰朗選手。禅道会と並行して、総合格闘技の坂口道場、柔術のエクストリーム柔術アカデミーでも学び、プロ選手としてパンクラスのリングに上がっている。神奈川県の川崎市の出身で2001年の12月生まれの21歳。総合格闘技のファイターとして将来を期待される佐藤だが、格闘家として良くあるような活発でやんちゃな子どもではなかったらしい。だからと言って、ひきこもりがちな少年だったわけではなく、遊ぶのは外。友だちと鬼ごっこやサッカーをしていたそうだ。少年時代を振り返って、佐藤はこう語ってくれた。

「自分から友だちを誘って、遊びに出ることはありませんでした。誘われて行くという感じで。そういう意味でもぐいぐいと前に出る性格ではなかったですね。どちらかと言うと、控えめな性格でした」
 そんな佐藤に対し、両親は元気な少年になってほしいという気持ちがあったのだろう。ありとあらゆるスポーツを勧めてきて、実際に取り組んできたそうだ。それが体操、水泳、野球、サッカー、柔道。この中で一番、続いたのが柔道(地域の柔道教室)で小学校の五年生から始め、高校を卒業するまで続けていたと言う。本人は中学まで続けようと思ってやっていた。それを潮時と考えていたのだろう。学生生活も楽しかったと言う。クラスのりが良くて、一つひとつの行事が盛り上がっていたそうだ。当時の友だちとの付き合いは今も続いているとのこと。佐藤にとって、楽しい青春の一ページになったのである。

「柔道は中学時代にベスト4までになりました。そしてスポーツ推薦で進学しただけに、高校はただひたすらに部活だけでした。でも、これが自分にとって大きな自信になったのです。高校は柔道部に在籍していました。補欠でしたが、団体戦に出場することもありましたし、最終的にはレギュラーになっていました」

 

寝技・締め技・関節技の修得を目指して、柔術道場へ

 このあたりから、佐藤の格闘技人生が本格的に始まる。きっかけは高校の部活の顧問から柔術の道場を紹介されたことである。

「その先生は柔術とグラップリングが強い方だったのです。柔術の道場に入門して、初めて総合格闘技というものがあることを知りました。柔道の場合は投げるか寝技の流れで決着がつきますが、柔術は寝技・締め技・関節技がメイン。それがしっかり決まって、決着がつくのが魅力に感じました。不透明な審査判定ではなく、技が決まれば勝利というのが良かったですね。柔術の動きや技を柔道にもつなげていました。今思えば、それを目的に入門させられたのではないかとも感じるのですが…。と言うのも、高校の柔道部が寝技を重視していたのです。しぶとく食い下がって、寝技に持ち込めば試合を有利に進めることができるので、顧問の先生はご自身の体験から柔術を勧めてくれたのではないかと思います」

高校を卒業してからの進路は大学は受かっていたのだが、家から所在地が遠かったため、交通時間がかかり過ぎた。練習時間の負担になると考えた佐藤は大学に進むことは辞め、道場の近くにある専門学校に入学した。同時に、総合格闘技の道場にも入門した。こちらは柔術と並行しながら練習をしていたのだが、柔術の方が居心地が良かったので、総合格闘技を辞めて柔術の道場からアマチュアパンクラスの試合に出場したと言う。最初の試合は20213月、佐藤の打撃で相手がカットして、TKO勝利。二試合目は20217RNC(リアネイキドチョーク)で勝利。試合運びを聞くと、二試合とも組んでから寝技に持ち込む流れだったので、「自分はどちらかと言うと、寝技の選手なんだ」と思ったそうだ。ちなみに柔術は抑え込みだけでは終わらない。決めないと終わらない。長年、柔道を経験してきた佐藤にしてみればそれが新鮮だったと言う。

「柔術を始めたことで、関節などの締め技を決めることが多くなりました。技のバリエーションが広がり、攻め方も増え、自分なりに自信を持てるようになりました。そこで次の目標をパンクラスのネオブラッドトーナメント(新人王戦)にして応募したのですが、相手がいなので、ワンマッチで出てくれと言われました。それがデビュー戦になったのです」

その試合は2021912日で対・廣野雄大選手。リアネイキッドチョークを決めての勝利だった。その試合を振り返って、佐藤はこんなことを語ってくれた。

「プロ初勝利はすごく嬉しかったですね。観衆のいる中での試合だったので、勝利した時の高揚感が高かったです」

その勢いで勝ちに行こうと思った二試合目は対・押忍マン洸太選手

KO負けになってしまった。

「自分の方が強いと思っていたのですが、相手の右のストレートで倒されました。周囲からはすぐに歩いていたと言われたのですが、記憶が飛んでいました。そこまでガッツリ倒されたのは初めてだったので、悔しかったです」

勝ちっけ満々であったにもかかわらず、初のKO負けがこたえたのであろう。グラッブリングを得意としていた佐藤だが、総合格闘技の試合をする以上は打撃戦ができる立ち技もやらなければならないと思い、禅道会に入門したのである。禅道会は有名な総合格闘家が所属しているなど、その名前も佐藤は耳にしていた。また、柔術の道場とは別にプロの集まる練習会にも参加していたのだが、そこにも禅道会で練習している選手がいたのである。打撃技も体得して強くなりたいと思っていた佐藤は、こうして禅道会・横浜支部に入門する。

「打撃の練習は学ぶのが初めてで、初歩的なことからやるのが新鮮でした。一か月後に試合の試合にも勝利を治めることかできました。

その試合が20221010日に行われた対 岩城啓祐選手。

「寝技がメインの試合展開になりましたが、そこにつなげるための打撃技が使えたことが良かったです。また、寝技につなぐためのタックルまで、学んだことを活かすことができました。多少ですが、パンチのいいのも入れることができましたし…。相手に当てることができたのも自分の中で評価できました」

プロ選手を目指したきっかけを佐藤に訊ねたところ、こんな回答が返ってきた。

「高校の顧問から教えてもらう中で、プロのリングの話を聞かされ、体を使って収入が得られる世界が面白そうだと思ったのです。また、うちの家系はスポーツ系が苦手だと身内から言われていたので、それを見返したいという気持ちもありました」

タイトルを獲得して、世界のステージで試合をしたい

試合を優位に運ぶための攻撃パターンを持っていることは有利だが、佐藤のそれはワンツーを打ちながら、タックルにいったり、フックを振ってタックル、パンチからのミドルなどだそうだ。KOまでできるかどうか別として、ある程度はできるようになったと言うから、それも自信になっているのであろう。

「禅道会の練習は教え方も丁寧でわかりやすかった。自分でも打撃の原理は分かっていたので、吸収しやすかった」と語る佐藤のこれからの目標を聞いてみた。

「今年の34日、品川のインターシティホールで行われるネオブラッドトーナメントに勝利することです。新人王のような試合なので、勝ち上がって、まずは王者になりたいです。それを取ったら、先の目標も新たにが見えてくるので勝ち続けていきたいですね。最終的には海外の大きな試合に挑戦したいと思っています」

淡々とではあるが、将来ビジョンを語る佐藤。その目標は必ず、実現するであろうと確信させられた。

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